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番外編 一太、おめでとう

「ままたん役をハルちゃんに押し付けられたんだ。しゃあないだろう」 鞠家さんが自嘲しながら、フーさんとウーさんは鼻が利くから邪魔にはならないはずだ。そう言って二人を手招きして呼んだ。 「ままたん、ここちゃんのごはんはまだですか?」 遥香の元気な声が聞こえてきた。 「おっとハルちゃんが呼んでる。まぁ、そういうことだ。フー、ウー、オヤジと一太くんを頼むぞ」 そう言うとそそくさと戻っていった。 柚原さんに付き添ってもらい30分くらい遅れて小学校に着いた。 学内に咲いた桜やチューリップの花と新緑の木々を見ながら、校庭を横切り昇降口に向かった。 正門前に立て掛けてある「入学式」の看板の前で記念撮影する親子と順番待ちの行列が出来ていた。 「未知どうした?」 じろじろと好奇の眼差しを向けられ、ひそひそと耳打ちする声が漏れ聞こえてきて、思わず立ち止まった。 幼稚園の保護者のみんなは僕が両性であることに理解を示してくれた。 みんながみんな分かってくれる訳じゃない。 陰口を叩かれることも、後ろ指を指されることも覚悟している。 「ねぇママ、あの人、男のひと……なのに、なんでお腹が大きいの?」 「なんでかしらね。ママも分からないわ」 冷ややかな視線に晒されて一刻も早くこの場から立ち去ろうとしたけど、足が縫い止められたように動いてくれなかった。 「◯✕□△!」 柚原さんでなく、ウーさんがどこからか駆け付けてくれた。

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