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番外編 一太、おめでとう

小学校の回りは住宅が密集していて、車一台がやっと通れるくらい道幅が狭い。柚原さんの説明では、鉢合わせになってしまった黒い車と白いワゴン者が互いに一歩も譲らずぶうぶうとクラクションをけたたましく鳴らしていた。 捲し立てるように早口で激しく怒鳴り合う声は日本語ではなかった。 だからなおさら恐怖を感じたのだろう。 子どもの手を握り締め、我先にと昇降口に殺到し、辺りは騒然となった。 「未知こっちだ!」危険をいち早く察した柚原さんが手を引っ張ってくれたから、人の波に飲み込まれずに済んだ。 「皆さん落ち着いてください‼」 先生方と来賓で呼ばれた駐在所のお巡りさんが騒ぎに気付き慌てて駆け付けてくれた。 「もしかして菱沼組の関係者か?」 チラリと一目見るなり僕のことが分かったのか、鋭い眼差しを向けられた。 「だから何だ?悪いのか?」 柚原さんが負けじと睨み返した。 「いや別に」 バカにするように鼻先で笑われた。 今日から6年間お世話になる小学校で初日から騒ぎを起こすわけにはいかない。 柚原さんに、無視して彼と一太のクラスに早く行こうと声を掛けた。 「ヨウ ヨウ ユェン、逃げるのか?」 空耳かも知れないけど、憎しみに満ちた声が背後からから聞こえてきたような気がして。すぐに後ろを振り返った。

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