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番外編 一太、おめでとう

あれ?さっきまでいたはずのお巡りさんの姿が忽然と消えていた。 「どうした?」 立ち止まりキョロキョロと辺りを見回していたら柚原さんに声を掛けられた。 「気のせいかも知れないけど、声が聞こえたの。ヨウ ヨウ ユェン、逃げるのかって」 「そうか未知にも聞こえていたか」 何か心当たりでもあるのか、はぁ~と大きくため息をついていた。 ちょうどそのときだった。 頭上の窓がすっと静かに開いたのは。 「たく、お前も地竜《ディノン》そっくりだな」 咄嗟に身構えた柚原さんだったけれど、ひょいと飛び下りてきたのはウーさんだった。 児童と保護者の安全を守るため昇降口はすぐに閉められ施錠されたから、窓から出入りするしか手はなかったみたいだった。 变色龙《ビエンソーロン》。かつて自分が呼ばれていた名前を一人言のように口にするウーさん。 「これだけ大勢の中に安井カオルが紛れ込んでいたとしても、誰も不審に思わないだろう」 「柚原さん、あのフーさんは?大丈夫かな?」 「ヤツは不死身だ」 ウーさんも大きく頷いていた。 「未知」彼がすっ飛んできてくれた。 「一太は?」 「担任とクラスメイトと教室にいるから大丈夫だ」 「良かった無事で・・・・・」 一番そのことが気掛かりだったから、ホッと胸を撫で下ろした。

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