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番外編 一太、おめでとう

「たく、なんで1年の教室が二階なんだよ」 「そんなこと言っても仕方ないよ」 重たいお腹を片手で支え、もう片方の手で階段の手摺をぎゅっと掴みながら、細心の注意を払い一段ずつゆっくりと階段を下りた。 彼が側にいてくれる。 それがどんなに心強いか。 「マーダイジョウブ?」ウーさんが階段を駆け上がってきた。 彼の話しでは、一太に「フーさんウーさん、ママとお腹の赤ちゃんを守って下さい‼」と頼まれたみたいで、下に下りるまで付き添ってくれた。 「どうした?」 体育館の前で急に立ち止まった僕に彼が心配そうに声を掛けてくれた。 「学校の体育館ってこんなに広くて大きかったんだね。中学校は3年生の10月までしか通学してなかったから……一太がお腹にいるって分かって、一太を守るため親元から逃げ出したから、卒業式も出なかったし、卒業証書ももらってないんだ」 高い天井と高天井照明をぐるりと見回した。 「そっか、辛いことを思い出させて悪かったな」 「ううん、大丈夫。卒業式よりも、卒業証書よりももっと大切な、遥琉さんと、かけながえのないたくさんの宝物を授かることが出来たから後悔はしていない」

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