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番外編 一太、おめでとう
「みんな笑って!はい、チーズ!」
無事に入学式が終わりクラスごとに集合写真を撮る写真業者の声が体育館に響いていた。
「いちたくんのままはここ」
クラスの女の子たちが保護者席から椅子を運んできてくれた。
「せんせいのとなりだよ」
「みんな、ありがとうね。一太もありがとう」
お礼を言って椅子にゆっくりと腰を下ろした。
式に来賓として参列した町内会長さんや市議会議員、校医の先生などが一度退席したあとすぐに戻ってきて、彼のもとに集まってきた。
「卯月さん、いつもお世話になりありがとうございます」
「いえこちらこそ、みなさんにお世話になってばかりですみません」
常に相手に敬意を払い、相手の気持ちを汲み取って物を言い、行動する。
侠気に溢れリーダーシップがある彼をみんな敬い、そして心から慕っている。
ヤクザでもカタギでも関係ない。
卯月さんの実直で真面目な人となりに惹かれたんだって町内会長さんが言ってたっけ。
「あの~卯月さん~」
立ったまま世間話をしていた彼に、先生が申し訳なさそうに声を掛けた。
「すぐに行きます。では失礼します」
深々と頭を下げると、ぴんと背筋を伸ばし前を見据え戻ってきた。
その姿は威風堂々として、何物も寄せ付けない威圧感があり、みんな圧倒されていた。
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