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番外編 薄墨の女

「若先生が標的に?」 「惣一郎さんと蜂谷がいなくなるのを虎視眈々と狙っていたんだろう」 「そんな……」 無関係なはずの若先生だけじゃなくて、斎木先生の命まで・・・・・ 最悪の事態が脳裏を過った。 事務所があるビルの前に着くと、ファッション雑誌のモデルかと思うくらい華やかな美人がボディガードの屈強な大男を従え弓削さんら幹部の皆さんと睨み合っていた。 通りを行き交う通行人たちはあえて見ないようにして足早にそそくさと通りすぎていた。 「なんでまた千里とおんなじ格好しているんだ」 彼がため息をつきながら額に手をあてた。 髪が長いその女性は細身のボディラインと大きな胸を強調するかのような、かなり丈の短いワンピースを着ていた。 「あれじゃあ呑み屋のねぇちゃんじゃねぇか。本当に弁護士か?」 柚原さんも苦笑いを浮かべていた。 「人目につきやすいところで騒いで。近所迷惑だと少しも思わないんだろうな。はた迷惑な連中だ。困ったもんだ」 弓削さんと一緒にいた根岸さんと伊澤さんが連れ立ってこっちに向かってきた。 警備をしていた若い衆が車に駆け寄り、辺りを警戒しながらドアを開けてくれた。 「根岸、伊澤、悪いが未知と一太を家まで送り届けてからフーとウーを連れて岳温泉に向かってくれ」 「おぅ、任せておけ」 彼と柚原さんが車から下りると、入れ違いに根岸さんと伊澤さんが乗り込んできた。 「未知、子どもたちと家で待っていてくれ。すぐに帰るから。惣一郎さんと和江さんはもう着いている頃だろう」 「うん、わかった。遥琉さん、絶対に無理しないで。お願いだから」 「分かってるよ」 いつもの優しい笑顔で見送ってくれた。

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