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番外編 薄墨の女

「現役の医者だしいいカモになるとでも思ったんだろう。生憎、斎木は千里一途だ。他の女に興味は一切ない。だから、騙されたフリをして、千里に女のことを逐一報告していた。遥琉は斎木親子を守るため、腕の立つ若い衆を運転手兼看護助手として潜り込ませていた。千里も知り合いの女を介護スタッフや患者の娘として潜り込ませていた。だから、自暴自棄になったカオルに銃口を向けられても斎木も息子も冷静でいられたんだと思うよ」 お祖父ちゃんがスマホの画面を見せてくれた。 そこには、岳温泉にある診療所で発砲事件か?四人が負傷し県の防災ヘリでF医大付属病院に緊急搬送された模様。一人は意識不明の重体。 そう報じていた。 「そんな・・・・・嘘・・・・・でしょう」 がたがたと手が震えてスマホを落としそうになった。 お世話になった駐在さんや、ご近所さんの顔が次から次に脳裏を過っていった。 みんなどうか無事でいて。 もう誰一人傷付いて欲しくないし、悲しい思いをさせたくない。

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