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番外編 薄墨の女

「相変わらず橘は最強だな」 「お前らのやり取りを見ているとなんだかホッとする」 「親父、茨木さん、帰ったはずじゃあ」 「あ?明後日までいるって言ったはずだ。孫の晴れ姿を見るのを楽しみにして来たんだ。邪険に扱うな」 「上総の言う通りだ」 顔を赤らめほろ酔い気分のお祖父ちゃんとお義父さんがひょっこりと姿を見せた。 みんな揃いも揃って酒豪。お祖父ちゃんがお酒を呑む姿を今まで見たことがなかったから驚いた。 「播本はもともとかなりの大酒飲みだったんだ。だが、颯人とその母親を守るため酒を絶った。でも、その颯人も嫁を貰い一人立ちした。だから、また呑むようになったんだ」 お義父さんがそっと教えてくれた。 「じゃあ、私は、たいくんとここちゃんを寝かし付けたら、これを書かなければならないのでこの辺で失礼します」 橘さんが茶封筒を手にすると急ぎ足で部屋を出ていった。 「優璃、置いてかないでくれ。神様に誓って浮気はしていない。だから、お願いだ冷たくしないでくれ。紗智、那和、悪いがたいくん、ここちゃんを連れてきてくれ」 柚原さんが慌てて追い掛けていった。 「川合っていう弁護士、モデル並みのスレンダー美女みたいよ」 「男ならほっとかないわよね」 「紫さん、和江さんまでそんな疑うような目で見ないでください。紗智も那和もだ。神様に誓って未知以外の女に色目を使うことも、ましては浮気は絶対にしていない。川合っていう弁護士はすぐに追い返した。言い訳にしかならないかも知れないが情報が錯綜していて、斉木親子の安否確認に手間取っていたんだ」 しょんぼりして項垂れた。

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