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番外編 姐さんLOVE

「いくらオヤジの命令でも、好きでもない人を命懸けで守ろうなんて普通思わねぇよ。俺にとって姐さんは、この命に代えても守らないといけない大事な人だ」 遥か遠くに見える安達太良の稜線をじっと見詰め、弓削さんが静かに口を開いた。 「おそらく覚えていないと思うが、俺は姐さんに助けてもらったことがある」 「え?」 弓削さんのまさかのまさかの告白に驚き過ぎて声が思わず裏返った。 「ずっと前、心に悪さして、オヤジに半殺しされそうになった時、姐さんが、好きな人をそう簡単に忘れることなんて出来ない。悪気があった訳じゃない。そうオヤジに言ってくれたお陰で首の皮が繋がったんだ。破門されずにすんだ」 「そんなこと本当に言ったの?ごめんなさい、全然覚えていなくて……」 弓削さんに申し訳なくて項垂れた。 「姐さん頭を上げてくれ。オヤジに見付かったら……ってもう見付かっているんだが、一発ぶん殴られるから。頼む」 若い衆が震え上がるくらい鋭い眼光でいつも睨みをきかせている弓削さんが珍しく狼狽えていた。 「そんな理由でいきなり殴る訳ねぇだろう」 彼がゆっくりと姿を現した。 「素直に惚れているって言えばいいだろう」 「いえ、これからも誠心誠意姐さんに尽くし、子どもたちを守らせていただきます」 腰を九の字に曲げた。 「未知、弓削はな」 「オヤジ‼それ以上は‼」 弓削さんが急にあたふたし始めた。

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