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番外編 哀しき邂逅

「×○▽×○‼」 フーさんの制止を振り切り、ウーさんが入ってきた。目尻を険しく吊り上げ地竜さんの胸ぐらに掴み掛かった。 「ウー、止さんか」 「止めろ」 彼と弓削さんが慌てて止めに入った。 「いいんだ卯月。ウーはな、母親想いの優しい子なんだ。だから、怒ってるんだよ。マーを危険な目にばかり遭わせないで、さっさとダオレンと炎竜を捕まえろってな。そうだろう?」 地竜さんがウーさんを静かに見つめ返した。 「親の顔すら知らない、フーとたった二人で生きてきたお前にはじめて出来た家族だもんな。守りたい気持ちは分かる。俺だって、はじめて心の底から好きになった人たちを守りたいよ」 日本語のあとに中国語で話す地竜さんの言葉にウーさんははっとしたように目を見開いた。 「昨日が一太の入学式だって知って、急いで帰国した。和気あいあいとして仲睦まじくて、はたから見ても本当の親子のようで、俺の入り込む余地なんてこれっぽっちもなかった。だから、声すら掛けることが出来なかった。でも中国に戻る前に一目でいいから未知や一太に会いたくなって気付いたら家の前に立っていた。未知や一太は、俺がいなくても、橘や卯月やウーがいるから大丈夫だ。未知が幸せならそれでいい。これで最後にしよう。もう2度と会わない。そう心に誓った。でも、元気に登校していく一太の姿を見たら、やっぱり未知に会いたくなった。ウー、ごめんな。お前の大切なマーは、俺にとっても大切な人なんだ」

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