1159 / 4007
番外編 パンドラの箱に最後に残るのは
カオルさんの両親は二人とも日本人。不妊治療を受けてもなかなか子どもに恵まれず海外の代理母サービスに大金を払いインドに渡った。
現地の女性が借り腹となりカオルさんが出生した。
その女性がどういった経緯でシンガポールに移住したかまでは詳しくは分からなかったけど、彼女が未婚のまま産んだのがカレンさんだった。
二人は血縁関係はないものの同じ女性から産まれていた。
甲崎さんがカレンさんの国選弁護人と共に拘置所の中で接見しその事実を伝えると、自分は親に捨てられたんじゃなかったんだ、そう言ってその場に泣き崩れた。罪を償いちゃんと更正して自分を産んでくれた母親と生きて再会を果す。甲崎さんと弁護人にそう固く誓った。黒竜から命を狙われ、別の拘置所へと移送されたみたいだけど詳しいことまでは教えてもらえなかった。
「じぃじ、そうじぃじ、あさごはんだよ」
「さめちゃうよ」
パパに頼まれたのかな?一太と遥香が仲良く手を繋ぎ呼びに来てくれた。
「にいたんみて‼」
庭に出来た大きな水溜まりを見付けた遥香。綺麗と歓声をあげると、そのまま裸足で庭に下りようとした。
「ハルちゃん足ばっちくなるから、そうじぃじがんぶってやる」
惣一郎さんがそう言って遥香の前に座り直した。
「おぃおぃ、大丈夫か?腰痛いんだろう?」
「可愛いひ孫を儂が落とすわけないだろう。ハルちゃんおいで」
よいっしょと掛け声を掛けおんぶしてくれた。
「昨日の夜、でっけいらいさまが鳴っていんだ」
「ハルちゃんね、ねんねしていたからわからなかった。そうじぃじ、こわくなかった?」
足をぶらぶらさせながら遥香が聞くとどうかな~そう言って笑って誤魔化していた。
「くつはいてくる‼」一太が玄関へと元気に走っていった。
「ねぇ一太、学校に遅れちゃうから遊ぶのは帰ってからにしたらって・・・・聞いてないか」
「怒ってもしょうがねぇ。ついこの前まで幼稚園生だったんだ。な、未知」
見てて癒される和やかな光景をお祖父ちゃんは目を細めじっと眺めていた。
ともだちにシェアしよう!

