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番外編 ほんとうはバーバとマーの子どもに産まれたかった
「一張羅の晴れ着なんだ。汚したら大変だ。頼むからマーから離れてくれ」
冷や汗で額はびっしょり濡れていた。
「いっちょう・・・・・・ん?」
「マーはマタニティー用のフォーマルウェアそれ一枚しかないんだ。これからハルちゃんの入園式だ」
「あ、なるほどね。日本語難しい」
紗智さんが手の甲でごしごしと涙を拭いながらすっと体を離してくれた。
「行ってらっしゃいマー。子守りと留守番は任せて」
鼻を啜りながらも笑顔を見せてくれた。
「いつもありがとう」
「ううん大丈夫。ねぇマー、那和には俺から話すよ」
「僕から話す」
「兄としてちゃんと那和と向き合いたいんだ。バーバより頼りになる橘さんがいるから大丈夫」
ごほんとわざとらしく咳払いする声が聞こえてきた。
「なんだバーバいたんだ?」
「さっきからずっといるだろう」
「ちょうど良かった。入園式が終わったら地竜をちゃんとここに連れて帰ってきて。一発ぶん殴らないと、あれ?なんの虫だっけ?」
「腹の虫だ」
「あ、そう。それ‼一人じゃあ到底太刀打ち出来ないけど、那和と二人なら何とかなると思うんだ。腹の虫が収まらない」
「まぁ、せいぜい頑張れ」
「うん、頑張る」
俄然やる気になった紗智さん。
穏便にいこうと思っていたのに、逆に焚き付けてどうするのかな?
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