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番外編 ほんとうはバーバとマーの子どもとして産まれたかった

門の外に出ると黒ずくめの服を身に付けた男たちが道路の反対側にずらりと一列に並んでいた。 根岸さんや伊澤さん、それに若い衆と道を挟み無言で睨み合っていた。 「芫(ガン)、ここには来るなって言ったはずだ」 地竜さんの苛立った低い声が辺りに響き渡った。 「きみがボスの愛人(アイレン)か?噂通りなかなかの美人だな。でもオレの美しさには負けるがな」 男たちの背後からもう一人30代半ばくらいのスーツ姿の男性が現れた。 やや吊り気味の二重の目に付け根から高く隆起した鼻。品のある薄めの唇。 漆黒の髪は総髪で後ろに流されていて、完璧な美貌の持ち主だった。 流暢な日本語を話す男性の顔を一目見るなり、フーさんとウーさんが顔色を変え僕と遥香の前に立ち塞がった。 「好久不见(久し振り)、黄、变色龙」 クスリと笑うと、 「今はフーとウーだったな。結婚おめでとう」 フーさんとウーさんに睨まれるのがよほど嬉しいみたいで機嫌良く笑っていた。 「地竜、誰だ?」 「死神(スーシェン)のアンダーボスの芫だ。ベイ貿易有限公司のトップでもある」 「トップはボスだ。俺は2番手だ」 芫さんが強行突破しようとしたけど、フーさんとウーさんの強固な守りに行く手を阻まれた。 「芫、いい加減に諦めろ」 「わざわざ会いに来たんだぞ」 「来る必要はないと言ったはずだ。時間がないんだ。後にしてくれ」 地竜さんに背中を軽く押された。 「未知、卯月、先に車に乗れ」 「でも挨拶くらい………」 「ヤツの話しはとにかく長いんだ。関わらないほうが身のためだ。ほら早く。遅刻するぞ」 僕たちが乗り込むと地竜さんが芫さんという人から逃げるように助手席に乗り込んできた。

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