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番外編 本当はバーバとマーの子どもとして産まれてきたかった

芫さんを乗せたシルバーの見るからに高そうな外車が、僕たちが乗るワゴン車の後ろをぴたりと付いてきた。 背後に視線を感じて振り返ると、満面の笑みを浮かべ助手席から手を振られた。 「ねぇママ、おもしろいおじちゃんだね」 遥香も気になって仕方がないみたいだった。 チャイルドシートから身を乗り出すように何度も後ろを振り返り、その度に彼に「ちゃんと前を向いてお尻ぺったんして座ってないと危ないぞ」と注意されていた。 「なぁ地竜、ヤツはもしかしてナルシストか?」 「なぜそう思う?」 「さっき未知に、自分の方が美人だって喧嘩を売っていただろう?それに暇さえあるばサイドミラーや鏡ばかり見てるから」 「なるほどな。そうかも知れない。ちなみに彼の本職はメイクアップアーティストだ」 「は?マジか?」 予想もしていなかった意外な答えが返ってきて、声が裏返るくらい吃驚していた。 「ねぇ遥琉さん、メイクアップアーティストって何?」 「分かりやすくいうと、俳優や女優、モデルやタレントなどにメークを施す仕事だ。ほらよくメイクさんって呼ばれている。あれだ」 「へぇ~そうなんだ」 「だだし芫の場合、特殊メイクを専門とするメイクアップアーティストだがな。以前ウーが卯月の影武者に化けたときメイクを施したのはヤツだ。ある意味変態だ。まぁ、俺も人のことは言えないがな」 ウーさんの方をチラッと見ると、ぷぷと何かを思い出したのか一人で笑っていた。 それに対しウーさんは頬っぺたをこれでもかと膨らませ地竜さんを睨みつけた。 「二人とも感情を一切持たない鉄仮面だったのな。未知や卯月のお陰で感情表現が随分と豊かになった。前より笑うようになったし、怒るようになって本当に良かった」

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