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番外編 本当はバーバとマーの子どもとして産まれたかった
幼稚園の駐車場に着くなり地竜さんが芫さんに電話を掛けて、
「指示があるまで車から絶対に下りるなよ。未知とウーに半径30㎝以内接近禁止、お触り厳禁。破ったらお仕置きな‼」
早口で話すとぶちっとすぐに切った。
これには彼も運転手の若い衆もぽか~んとしていた。
「ヤツは油断も隙もない。一度目を付けられたら最後。ストーカーよりタチが悪い。未知、気を付けろよ」
「あの……どういう意味なんですか?」
話しが全然理解出来なくて聞き返すと、
「そのうち分かる。ハルちゃん、おじちゃんと一緒に下りようか?」
「はぁ~い!」
チャイルドシートを外してもらうと、ニコニコしながら自分から地竜さんの手を取り、ぎゅっと握り締めた。
「あのね、みぎみて、ひだりみて、もういっかいみるんだって。にいたんがいってた」
「そっか。変な人がいないか車が来ないかちゃんと確かめないとな」
「おじちゃんもみぎみて、ひだりみて、もういっかいみて」
「お、そうだったな」
恐れを知らない遥香にヒヤヒヤした。
頼むから地竜さんにくれぐれも失礼がないようにね。
芫さんも隣にいる運転手さんもこっちを睨んでるよ。
親の心配をよそに遥香はマイペースそのもの。
ぴょんと地面に飛び下りると、
「こっち、こっち!」
地竜さんの手をぐいぐい引っ張り園舎に向かった。
一太が去年の10月まで通園していたから、遥香にとっては慣れたもの。
出迎えてくれた先生にも気後れせず、はにかむような笑顔で元気に挨拶をしていた。
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