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番外編 地竜さんとワンさん
「地竜さん、ワンさんをこれ以上傷付けないで。僕よりも彼を大切にしてあげて。お願いだから」
地竜さんは何も言わず静かに立ち上がった。
襖戸の前まで移動すると立ち止まり、前を向いたままワンさんに話し掛けた。
「地獄か、天国か。好きな方を選べ。3分だけ待ってやる」
紗智さんが訳してくれた。
ワンさんは紗智さんと那和さん、そして一太と遥香の顔を何度も何度も見ていた。
例え地獄に落ちようが愛する人の側にいるか、やっと会えた兄弟とこのまま日本で暮らすかーー
悩みに悩んだ末ワンさんが選んだのは・・・・・
ワンさんがもしかしたら帰ってくるかも知れないと、あれからずっと一太と遥香は庭でワンさんの帰りを待っていた。
西の空は綺麗な茜色に染まっていた。
「風が出てきたから、そろそろおうちに入ろうか?風邪ひいたら大変だよ」
「もっとワンさんとあそびたかったのにな」
「ハルちゃんも」
二人ともワンさんの袖にしがみつき、いっちゃだめ‼ここにいて‼必死に引き止めたけど、ワンさんは首を横に振り、二人の頭を撫でて小对不起(ドゥイブーチー ごめんなさい)と呟くと地竜さんのあとを追い掛けていった。
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