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番外編 地竜さんとワンさん

広間にはピリピリとした物々しい空気が流れていた。 彼と度会さんと向かい合い座るワンさん。 正座は苦手みたいで体育座りをしていた。 それが幹部のみなさんには面白くない。礼儀知らずの生意気なガキだ。姐さんや子どもに危害を加える前に飼い主のもとに送り返せ。 そう口々に言う幹部に彼もどう対処していいか悩みあぐねているようだった。 ワンさんはワンで、若い衆に服を全部脱がされ、笑い者にされたことに対し辱しめを受けたと怒っているようだった。 そんな重苦しい空気を変えたのはやはり一太と遥香だった。 「一太、ハルちゃん、パパ達は大事な話し合いをしているんだ。おっきいじぃじと、じぃじと待っていよう」 止めようとしたお祖父ちゃんとお義父さんの制止を振り切り、 「さっちゃん、ななちゃんはやく!」 「ワンしゃん!」 部屋に籠っていた紗智さんと那和さんの手を掴みぐいぐいと引っ張ってきたのだ。 「いまはだめだ。二人とも部屋に戻れ」 「ねぇパパ、ワンさんは、さっちゃんとななちゃんときょうだいなんでしょう?」 「おぅ、そうだ」 「いちたは、ハルちゃんとたいくんとここちゃんと、ひまちゃんといつもいっしょだよ。ワンさんは、なんでだめなの?さっちゃんとななちゃんといっしょにいちゃだめなの?」 「一太お前………」 居並ぶ幹部の皆さんに臆することなく、一太は堂々としていた。 大人顔負けのはっきりとした物言いに彼も度会さんも度肝を抜かれていた。 「一太の言葉は利に叶っている。その通りだ」 「オヤジ、俺が責任を持って地竜の飼い犬の面倒をみます」 彼のすぐ側にいた弓削さんが手を挙げた。 「姐さんに危害を加えないように俺がしっかり見張る。まずは礼儀作法をみっちり叩き込んでやります。なので、俺に預けてください」

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