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番外編 鶴首
「なんで電話に出ないんだ」
「着信拒否にしてんじゃあねぇぞ」
スマホに向かいぶつぶつと独り言を口にする彼。かれこれ30分近くスマホとにらめっこしている。
「そんなに見詰めるなよ。キスしたくなるだろう?」
困ったように苦笑いされてしまった。
「遥琉さんを見詰めていた訳じゃあ………」
伸びてきた手がそっと肩に触れてきた。首に触れ、頬に触れて。
お腹を労るようにゆっくりと引き寄せられた。
首を支えてくれる手は大きくて温かい。
お腹を撫でてくれる手も優しさに溢れている。
されるがままになっていると、鼓動が大きくなるにつれ、彼との距離もぐんと近くなった。
「いいのか?」
微かに目をすがめた彼が掠れた声で聞いてきた。
「……うん」
キスだけなら、橘さんに怒られないはず。
答えて頷くと、彼の双眸は熱を孕み、見つめていられないほどの色香を瞳に宿すのが分かった。
「未知ーー愛してる」
耳を撫でるのは、真摯で重く、大切でかけがえのない声。
その瞬間、全身が幸せに包まれた。
「・・・・僕も・・・・僕も・・・・遥琉さんが、好きっ・・・・」
感激に戦慄く唇で懸命にそれだけ紡ぐと、ありがとう未知、と囁きが耳を掠め、唇に唇が触れてきた。
触れては離れ、また触れてきて。
そっと静かに抱き締められ、幾度となく蕩けるくらい甘い口付けを交わした。
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