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番外編 鶴首

「ねぇパパ、じぃじとおっきいじぃじは?」 眠たそうに目を擦りながら起きてきた一太。真っ先に二人がいないことに気付き寂しくて今にも泣きそうになった。 「始発の新幹線で帰った。やらなきゃならない仕事がいっぱいあるんだって」 片膝を立てて彼が一太の前にしゃがみこみ、頭を優しく撫でてくれた。 「じぃじもおっきいじぃじも、まいにちおしごとがんばってるもんね。いちた、さみしいけどがまんする」 「偉いぞ一太」 「うん‼」 「そういえばおっきいじぃじがな、一太や遥香と一緒にこっちで暮らしたい。そう言っていたぞ」 「ほんとう?」 一太が目をうるうるさせながら彼の顔をじっと見詰めた。 「嘘ついてどうする」 「やった‼」 たちまち一太の顔が明るくなって。 全身で喜びを爆発させた。 「まずは地竜の置き土産のワンともう一匹の飼い犬をどうにかしないとなぁ」 「もういっぴき?」 一太が不思議そうに首を傾げた。 「しばらく置いてくれって門の前で朝っぱらから騒いでいたんだよ。ウーのことは諦めるってパパ確かにそう聞いたんだけど、聞き間違いだったかな?一太、まずは顔を洗ってこい。それから朝飯だ。学校から帰ってくるころに弓削に命じワンを連れてきてもらおう」 「ワンさんだいじょうぶ?」 「弓削は新入りには厳しいが、面倒みはいい。だから、大丈夫だ」 「うんわかった。おかおあらってくるね」 一太が笑顔で洗面所に駆けていった。 「遥琉さん・・・・・」 不安そうに見つめると、 「大丈夫だ。心配するな」 にっこりと穏やかな微笑みが返ってきた。
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