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番外編 鶴首

帰ったと思っていた芫さんがごく普通に若い衆に混じり朝御飯を食べていたものだから、ウーさんは腰を抜かすくらい驚いた。 「お、オレの愛しのウー。おはよう」 満面の笑みを湛え手を振る芫さんに、ウーさんは危険を感じたのか橘さんと柚原さんの後ろにさっと隠れ警戒心をむき出しにした。 毛を逆立てる様子がまるで猫みたいだ。 「人妻に馴れ馴れしいですよ」 橘さんの目が完全に座っていた。 「そう怒るな」 芫さんは全く動じなかった。それどころかたまたま隣に座っていた若い衆の手の甲をチラリと見るといきなりスイと掬いあげた。 「な、な、な、何ですか!」 若い衆の表情が一瞬で凍り付いた。 「綺麗だな」 両手で掲げもたげるとうっとりと見詰めた。 「ドラゴン?」 「一致団結し黒竜《ヘイノン》から姐さんを守る、ゲン担ぎのようなものです。弓削さんの弟分はみなタトゥーシールを手の甲にしています」 「ユゲ?」 芫さんが怪訝そうに眉を潜めた。 「あなたと同じナンバー2の男です。ワンさんの子守りをしてくれています」 「玩偶に新しい飼い主が見付かって良かった」 「ワンさんの飼い主は地竜さんですよ。芫さん、彼《若い衆》が困っていますよ。手を離して下さい」 「これほど美しい芸術品はない」 芫さんは首を横に振ると、若い衆の手の甲に顔を寄せ嬉しそうに頬擦りをはじめた。 「・・・・・・」 若い衆の表情はひきつり、呆然自失となった。 「芫、オヤジがいないことをいいことに、調子に乗るのもいい加減にしろよ」 柚原さんがジロリと睨みを利かせ牽制した。

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