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番外編 鶴首

「おぃ‼人の話を聞け‼」 芫さんの視線がまた違う人を捉えた。 一切耳を貸さず、若い衆の手をすっと離すと庭へと向かった。 次に目を付けられたのは・・・・ ジャージ姿でホウキを握り締める鳥飼さんだった。 フーさんが腰に腕を回し、ピタリと寄り添っていた。 何をする訳でもなく鼻と鼻とをくっ付け、ファスナーを弄りながら談笑していた。 二人はいつもそうだ。 人目をはばかることなく朝っぱらからイチャイチャしている。 子どもたちにはちょっと刺激が強いから、イチャイチャするならいないところでしろ‼今のところ、二人とも彼の言い付けをちゃんと守っている。 鳥飼さんの右手の甲にはドラゴンのタトゥーシール。左手の甲には、フーさんとお揃いの黒蝶のタトゥーシール。 「鳥飼も一応は弓削の舎弟だったな。ちと可哀想だが、これでしばらくは、ウーに付きまとわないだろう。ウー、子どもたちの様子を見てくるぞ」 柚原さんが日本語と中国語で話し掛けた。 逃げるなら今だとばかりにウーさんを連れ、そそくさと広間をあとにした。 「遥琉と渡会さんは、一太くんを送り届けたらすぐに戻ってきます。よほど疲れたんでしょうね。ワンは死んだように熟睡していて一向に起きる気配がないと弓削さんから連絡がありました。鳥飼さんとフーさんには申し訳ないですけど、芫さんの相手をしてもらいましょう」
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