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番外編 鶴首
春の柔らかな日差しが降り注ぐ縁側に紗智さんとワンさんが並んで座っていた。
夜型の生活をしている那和さんはまだ起きてこない。
何を話しているのか、中国語だからちんぷんかんぷんで全然分からない。
四人兄弟の一番上のお兄ちゃんとしてやるべきことをやる。紗智さんが決めたことだもの。バーバとマーに出来ることといったら遠くから二人をそっと見守ることくらいしかない。
ベタベタと鳥飼さんに触りまくる芫さんにフーさんの堪忍袋の緒が切れた。
「愛人 不許碰!( 妻に触るな!)」
凄みを利かせ睨み付けた。
まさに一発即発。
もともと二人はウーさんを巡り対立していた。いわば犬猿の仲。
喧嘩をするなら外でやれ。
場を納めたのは彼と弓削さんだった。
ワンさんは男らしい二人に羨望の眼差しを向けた。
「俺も那和もバーバに憧れてる。ワンは地竜にだよね?」
いくら待っても着信音が鳴らないスマホを大事そうに抱えていたワンさんがこくりと頷いた。
「マーはみんなのマーなんだよ。ワンだってマーのこと絶対に好きになる。だから、地竜のところに帰らずこのままここで暮らそうよ。言葉が通じなくても大丈夫。フーとウーみたく愛の力でなんとかなる。ね?」
肩にそっと手を置いて励ました。
「カシラすみません」
鳥飼さんが年下の弓削さんにペコペコと頭を下げる様子を芫さんは興味深そうに眺めていた。
「カシラ?」
「そうだ、俺が若頭の弓削だ」
芫さんが舐め回すように弓削さんの体をうっとりとした眼差しで見詰めた。なんだろう。すごく嫌な予感がする。
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