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番外編 鶴首

ワンおいで。地竜さんが名前を呼んで手招きした。 でもワンさんは…… おもいっきりあかんべーをすると、近くにいた若い衆の背中に隠れてしまった。 「みんながみんな姐さんやマーと呼ぶものだから、一丁前に焼きもちを妬いて、いつもあぁやって臍を曲げているんだ。未知に辛くあたるな、返事くらいしろ、優しくしろっても聞く耳を持ちやしない」 「足を掛けたり、後ろから押すな。妊婦には優しくしてやれ。よ~く釘をさしておかないとな」 立ち上がろうとした地竜さんを彼が止めた。 「今朝、一太や遥香にママに優しくしてあげなきゃもう二度と遊ばない。勉強も教えてあげないって言われて、かなり凹んでいたんだ。橘や紗智や那和、それに鞠家や紫さんが注意して見ててくれるから大丈夫だ。頭ごなしに怒られたらワンだって面白くないだろう」 「それもそうだな。遥琉、ワンのことを頼む」 胡座から正座に座り直し、深々と頭を下げる地竜さん。 「止せや。かたっ苦しい挨拶は苦手なんだ」 その光景をワンさんは不思議そうに眺めていた。 炎竜が待っているから帰る。 すっと静かに立ち上がった地竜さんの前に、 さっきまでいなかった芫さんが、ふらっと現れた。 「芫、帰るぞ」 「ユゲが一緒なら帰ってやってもいい」 「は?今何て言った?」 言われたことに対し、悪いがもう一度言ってくれと頼む地竜さん。

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