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番外編 スペア
「橘さん、ワンさんを怒らないであげて。悪気があったわけじゃないの」
台所にいる3人を見付けた。
「優璃は怒ってないよ」
柚原さんが太惺と心望の着替えを持ってきてくれた。
「未知、これはワンがずっと胸の奥にしまっていた本音だ」
ポケットからメモ紙を取り出すとそれを渡された。
自分には何の価値もない。
他人という名の弟のためだけに生かされているだけ。
自分は絶対に自由になれない。
意志はあっても自分の意志ではない。
自分は実験用のモルモットと同じだ。
死ねば自由になれる。
橘さんの字で箇条書きにしてあった。
「ワンは安心できる人達と出会い、少しずつだが心を開き、助けを求めはじめようとしている」
「彼は働きたい、そう言ってます。私や柚原さん鞠家さんのところにいたら甘えてしまうだけ。弓削さんのところは芫さんが睨みをきかせてますからね、 残る幹部は………」
「えっと………根岸………さん?」
「えぇ。弓削さんよりも新入りに厳しくて、3日と持たず皆さん逃げ出してしまい、いまは伊澤さんが側にいるだけです。未知さんから頼めば、少しは優しく接してくれると思うんですが………」
「分かりました。ワンさんは褒められればきっと今より伸びると思います。一太が小学校に行っている間、いろんなことを教えて欲しいって根岸さんと伊澤さんに僕から頼んでみます」
「お願いします」
「はい」助けを求めているワンさんをほっとけないもの。
身重の僕に出来ることは限られているけど
、それでもワンさんのために何かしてあげたい。
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