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番外編 スペア

「まだ少し匂うが我慢できるか?姐さん、俺らに頼みたいことってなんだ?」 鋭い眼差しを向けられ、すぅーとひとつ深呼吸をしてから言葉を返した。 「ワンさんをここで働かせてください。トイレ掃除でもカバン持ちでもなんでもいいんです。ずっと病院に閉じ込められいたみたいで、他人とのコミュニケーションがうまく取れません。読み書きも出来ません。それに言葉の壁もあります。無理なのは承知の上です。どうか、お願いします」 お腹を手で支えながら下げられるところまで頭を下げた。 「姐さん、頭を上げてください。オヤジに半殺しにされる」 根岸さんが急に慌て出した。 「姐さんのたっての頼みだ。明日からでもここに来たらいい」 「良かった。ありがとうございます。それで根岸さん」 「ん?」 「ワンさんは褒めれば伸びる子です。だから、頭ごなしに怒らないで、なんでダメなのか教えてあげてください。何かあれば僕に言ってください」 「まぁ、日本と中国じゃあ、言葉も習慣も全然違うからな。分かった。なるべくガミガミ怒鳴らないように気を付ける」 「ここに来てから、悪戯ばかりして、怒られることばかりしてますが、本当はみんなに愛されたいんだと思うんです。だから………」 根岸さんと伊澤さんがクスクスと笑い出した。 「お節介やきのところが播本そっくりだ」 「だな」 「姐さん、ワンのことは俺らに任せろ」 力強い2人の言葉がとても嬉しかった。 でも気掛かりなことがひとつだけあった。

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