1207 / 3283

番外編 スペア

「黒竜が口封じのためワンさんの命を狙っているとしたら、根岸さんと伊澤さんにも危険が及ぶかも知れません」 「臨月を迎える妊婦の側に置いとく方が危険だ」 「その通りだ。年はとっても若い者にはまだまだ負けない」 マル暴の刑事(デカ)がヤクザの用心棒に成り下がった。今は取り立て屋。警察の恥さらし。風下にも置けない。 部下だった茂原さんの逮捕を受け、責任を取り依願退職した伊澤さん。いまだ快く思わない警察関係者は多い。 「未知はおなかの子が無事に生まれてくることと、子どもたちのことを最優先に考えていればいいんだ。焼きもち妬きの癖にさみしがり屋の旦那の面倒は俺らでみればいいだけのことだ」 「伊澤さんありがとうございます」 ぺこっと頭を下げた。 「姐さん、ワンの新しい名前は?」 「それがまだ・・・・・紗智さんや那和さんみたく二文字で、日本語が分からなくても呼びやすい名前を彼が一生懸命考えているんですけど、なかなか難しいみたいで」 「なるほどな。いやな、ワンって犬みたいじゃねぇか。地竜の飼い犬は躾がなっていない。駄犬だって馬鹿にされているのがちいと可哀想だと思って。名前が決まるまで別な呼び方を決めてやろうと思ったんだ」 根岸さんがスマホを耳にあてた。 「俺だ。いちゃついているところすまない。隣にいる旦那に中国語で数字の9は何て呼ぶか聞いてくれないか?」 ーーあ?誰もいちゃついていねぇぞ‼それに旦那じゃねぇって・・・・・芫止めろ。耳を舐めんじゃねぇ。ソコは触るな!ーー どうやら電話の相手は弓削さんみたいだった。

ともだちにシェアしよう!