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番外編 スペア

「立ち話もアレだ。中に入ろう」 秦さんがドアノブに手を置いた瞬間、根岸さんがすっ飛んできた。 「換気もしていない、酒と煙草臭いところに姐さんを通す気か?うちの会社の方がまだましだ」 青空さんがちらっと秦さんの顔を見た。 「大丈夫だ。根岸は味方だ。信用出来る人間だ」 うん、小さい頷くと、根岸さんの後ろにくっ付いてすぐ下のフロアーにエレベーターで移動した。 「また随分と粋のいい兄ちゃんを連れてきたな。未知お帰り。また会えて良かった」 湯気の立つお茶をふーふーと冷ましながら飲んでいた伊澤さんが笑顔で迎えてくれた。 「秦の舎弟の青空と書いてそらだ。ぼぉーとしていないで伊澤に挨拶しろ」 「初めまして。久田原青空です」 青空さんはピンと背筋を伸ばし堂々と自己紹介した。 「久田原………?」 伊澤さんが一瞬眉を顰めた。 「あぁ、なるほどな。じゃあお前さんが尊の亭主か?」 「はい!」 青空さんは前を見据えとても大きな声で返事をした。 「ムショから尊が出てくるのを待ってくるのは大変だろう」 「尊と2人で暮らす夢を叶えるため、兄貴のところでいろいろ学ばせてもらってます。大変だと思ったことは一度もありません」 「そうか」 「未知さん、これがカレンの弁護士から預かった手紙です」 青空さんがジャケットの内ポケットから白い封筒を取り出すとテーブルの上に静かに置いた。手紙は2通あって、どちらもかなり厚みがあった。 用心に越したことはないからと根岸さんと伊澤さんで開封してくれた。 「カッターナイフの刃など物騒なモノは入っていない」 「こっちもだ」 念には念を入れ何度も確認してから手紙を渡された。

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