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番外編 酔生夢死
ワンさんがなかなか戻って来なくて。心配で家の中を探しはじめた。
少し歩くだけでも息が上がって苦しいけれど、ワンさんに何かあってからでは遅すぎるもの。
お腹を擦りながらあちこち探しているうち庭でぼんやりと空を眺めるワンさんの姿をようやく見付けた。
「ワンさん」
何度呼んでも聞こえないのか反応がなかった。
「ねぇワンさん、根岸さんがね名前が決まるまで仮の名前を決めてくれたよ」
驚かせないようにゆっくりと声を掛けた。
「……?」
不思議そうに首を傾げるワンさん。
その手には水鉄砲が握られていた。
一太が小学校から帰ってきたら一緒に遊ぶのかな?さほど気にも止めなかった。
「ワン‼」紗智さんの声が聞こえてきてなんだろうと顔の向きを変えた次の瞬間頭のてっ辺から爪先までびしょびしょになっていた。
「ワン、マーになんてことを……」
駆け付けてくれた紗智さんが裸足のまま庭に飛び降りワンさんの胸倉に掴み掛った。
ようやく我に返ったのか目を見開きわなわなと震えていた。
「橘‼紫さん‼マーが大変‼」
那和さんが声を張り上げて橘さんと紫さんを呼んでくれた。
度会さんと秦さんと別室で打合せ中の彼も呼んでくるように近くにいた若い衆に頼んでくれた。
「紗智、ひまちゃんの前だよ。ワンを叩いちゃだめよ!」
一度釘を刺すと、
「マーは働きたいって言ったワンのために大きいお腹でわざわざ根岸さんに頼みに行ってくれたんだよ。助けを求めるワンを救いたい一心で。それなに、なんで………紗智がこんなに怒るのはじめて見たかも」
那和さんが通訳しながら、若い衆が持ってきてくれたタオルを髪にそっと掛けてくれた。
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