1217 / 3283

番外編 酔生夢死

はじめ土曜日の予定だった大掃除が業者の都合で急遽今日の午後になった。 一太も遥香も、晴くんと未来くんと遊ぶのを楽しみにしている。 一太を小学校に送り出し、遥香を幼稚園バスに乗せ、出掛ける準備をしていたら、太惺と心望がきょとんとして、不思議そうに首を傾げながら天井を見上げていることに気が付いた。はじめはさほど気にも止めなかったけど…… 「誰かいるの?」 目を逸らさずじーと天井を見詰める二人の隣によいしょっと掛け声をかけてゆっくり座り、一緒に天井を見上げた。 時代を感じさせる古い造りの日本家屋の板張りの天井。目を凝らして何度見ても変わった様子は特になかった。 「誰もいないよ」 二人に声を掛け、子どもたちの着替えをバックに詰めていたら、上から誰かに見られていることに気付いた。 その瞬間、寒くもないのに背筋がぶるっと震え、ぞくぞくと鳥肌が立った。 おっかなびっくり天井をそぉーと静かに見上げると、板の継ぎ目のわずかな隙間からじっとこっちを見詰める黒い影とぎらぎらと妖しく光る血走った2つの目があった。 「…………!」 恐怖のあまり声が出なかった。 腰にも力が入らなくて、ガタガタと震えながら太惺と心望をきつく抱き締めた。 お願い。誰か……来て………

ともだちにシェアしよう!