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番外編 酔生夢死
「マー」紗智さんと那和さんの声が聞こえてきて。震える手で二人にぎゅっと抱き締められた。
「廊下に行こう」
「ゆっくりでいいよ」
若い衆と柚原さんたちもすぐに駆け付けてくれた。
「鼠を逃がすな!」
柚原さんのよく通る声が家中に響いた。
「私だって遥琉だって大事な舎弟たちを疑いたくはありません。でも、緊急を要するので、舎弟をすべて集め、やましいことがないか一人ずつ問いただしました。みな、やましいことなんてある訳ないと即答するなか、ある男は不適な笑みを浮かべ否定も肯定もしませんでした」
そこで一旦言葉を止める橘さん。
「皮肉なものですね。昨日まで仲間だと思っていた舎弟が実は黒竜が送り込んできたスパイだったのですから」
「男心は秋の空っていうだろう?まぁ、しゃあない。ヤツにも色々と込み入った事情があるんだろうよ」
組事務所とビルにテナントとして入る関連会社の朝イチのミーテングや打合せを一通り終えた彼が一旦戻ってきた。
「あまり表立って騒ぐと芫に勘づかれる。深追いはするな」
鋭い目付きで柚原さんらに指示をすると、
「良かった間に合って」
安堵のため息をつきながら目元を緩ませ太惺と心望の頭を優しく撫でてくれた。
「なんだ未知も撫でて欲しいのか?」
にやりと悪戯っぽい眼差しを向けられた。
「僕、子どもじゃないよ」
「目が撫でてって言ってるんだよ。恥ずかしがらずに言えばいいのに。太惺と心望のママは可愛いな」
クスッと笑うと頭を撫でてくれた。
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