1228 / 3283

番外編 酔生夢死

男達の背後に大きな人影が突然現れた。モニターには腰から下しか写っていない。 男達がぎょっとして振り返り、後退りしながら上を見上げると、ピザの箱をその場に残したまま一目散に逃げ出した。 「カメラがあるだろ?そこに向かって話せばいいんだ」 「マー、ウー」 腰を屈め興味津々にカメラを覗き込み笑顔で手を振るウーさんの姿がモニターに写った。 柚原さんも一緒だ。 「ウーは2メートル以上の身長があるからな。見たこともない大男にジロリと見下ろされたらそりゃあ誰だってたまげる。柚原、ウー、根岸がそっちに向かった」 「分かった」 「蜂谷が来るまでピザの箱には絶対に触れるな。若い衆にも周知徹底し、持ち去られないようちゃんと見張らせろ」 モニター越しにテキパキと指示を飛ばす彼。 3分ほどして柚原さんとウーさんが、根岸さんと共に部屋に入ってきた。 「パ~パ~た」 彼の足にしがみついていた太惺がすぐに柚原さんに気付いた。 心望もすぐに気付き、我先と競うようにハイハイで柚原さんめがけて向かった。 俺達大人には気付かない足音の僅かな違いをあんなに小さくてもちゃんと聞き分けているんじゃないのか? 彼がそう言っていたことをふと思い出した。 「ぱぱたんが来たのが分かったのか。そっか、たいくんに、ここちゃん、お利口さんにしていたか」 さっきまで顔を強張らせていた柚原さん。目尻を下げにっこりと微笑むと二人の頭を撫で撫でしてくれた。

ともだちにシェアしよう!