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番外編 酔生夢死
たまたま見ていたご近所さんが爆弾があると110番通報したみたいで蜂谷さんが到着するまえに警察が駆け付け、ニュースやドラマでしか見たことがない爆弾処理班まで出動し大騒動になってしまった。
彼と、連絡を受けて帰宅した信孝さんは外でかれこれ1時間近く事情を聞かれている。
「大方、何の罪もない一般人を巻き込むことで、菱沼組を槍玉に上げ、解散に追い込もうとする魂胆だろうよ」
根岸さんが外の様子をちらちらと伺っていた。若い衆と警察が道路を挟み睨み一歩も引かず合っていた。
上司に内緒で捜査に当たっていたことがバレた蜂谷さん。仲間の刑事にどんなに凄まれようが毅然としていた。
「尾形さんの家に掛かってきた一本の電話が彼女の人生を狂わせた。警察はまともに取り合ってくれなかった。門前払いだよ。でも卯月さんと度会さんと蜂谷さんだけは親身になって相談に乗ってくれて、尾形さんと彼女の息子を何とか助けようとしてくれていた」
ようやく落ち着きを取り戻したナオさんが、何があったか、ぽつりぽつりと話してくれた。
ガヤガヤと外がにわかに騒々しくなり、根岸さんが、
「やっぱり来たか」
ぼそっと呟いた。
道のど真ん中に急停車したシルバーのセダンから、黒いセルロイドの眼鏡を掛けた初老の男性が目を吊り上げて下りてきた。
「浅井か?」
「あぁ」
子どもたちの面倒をみてくれていた柚原さんが険しい表情を浮かべた。
ジウさんもただならぬ気配を感じたのだろう。心配そうに外の様子を見ていた。
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