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番外編マトリの女?
「そんな話し聞きたくないか。チカは物持ちがいいから、俺に好きな人が出来るまで第2ボタンを持っていて欲しいって頼まれたのよ。縁も縁もない福島県内にある高校に進学することに決めた。縣一家の長男坊としてではなく、ゼロからスタートしたいんだって言われれば幼馴染みとして応援しなきゃって思うでしょう。ねぇ、ナオさん、ユウくん特製のカレー冷めちゃうよ」
チカちゃんがドアに向って話し掛けた。
中から応答はなかった。
でもしばらく待っていると、
ーーあなたも、遥琉さんと橘さんみたく、彼とその……ーー
ナオさんの涙混じりの声が返って来た。
「ノブくんは純情乙女……じゃないオトコの子なのよ。あなたと出会うまで浮いた話しは聞いた事がないわ。馬鹿が三つ付くくらい真面目なのよ。それは妻であるあなたが一番分かってることじゃないのかしら」
チカちゃんの目はとても優しい目をしていた。顔は彼なみにかなり怖いけど………ギャップの差が半端ないけど、本当は彼や信孝さんら友だち想いの優しい人なのかも知れない。
ーー信じていいの?僕、もう傷付きたくないーー
「あなたやノブくん、それにハルくんや未知さんを守るためにアタシはここにいるの。恩返し、させて」
カチャと音がして、ドアが少しだけ開いて、ナオさんが顔だけ出した。
「守る?恩返しって?」
不安でいっぱいなのだろう。
目は潤み、声も震えていた。
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