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番外編 マトリの女?
「じゃあなんでさっき」
「アタシ流の挨拶よ。もしかして、気にしてた?」
ごめんね。悪気はなかったのよ。と謝りながら、ナオさんの手にドロップスの缶を大事そうに握らせたチカちゃん。
「あ、そうだ!アタシとしたことが。やぁね~~もぅ」
そう言いながらポケットから油性のマジックを二本取り出した。
「ちょっと待ってね」
相合傘の左側、空いているところに【ナオ】と黒で書いて、そして傘の上の、薄くなったハートを赤で塗り直してくれた。
「これでよしっと」
「ありがとうチカさん。僕、彼の学生時代のこと全然知らなくて。だから、すごく嬉しい」
目に涙を浮かべぎゅっと両手で抱き締めた。
「これでアタシも肩の荷が下りたわ。まずはカレー、食べようか?」
チカちゃんがナオさんに寄り添い優しく声を掛けると「うん」鼻を啜りながらも笑顔を見せてくれた。
「蔡慶(さいけい)という男と皆藤が頻繁に連絡を取り合っている。蔡慶は、古狸と浅川とも繋がりがある。匿名のタレコミがチカのところにあった」
「天機星である地竜が抜けたのにも関わらず、活動を活発化させている黒竜に警戒はしていたんだ。蔡慶は中国三大奇書のひとつ水滸伝に登場する108の英傑の一人だ。死刑執行斬首人の地損星、一枝花(いっしか)の名前に由来する。鞠家がインターポールに派遣されていたとき国際指名手配されていた男だ。ちなみに天機星は軍師である呉用のことだ」
蜂谷さんとチカちゃんがーーついさっきまで女子だったチカちゃんが、すっごく真剣な眼差しでソファーに座っているのがどうしてもおかしいみたいで、ナオさんや紗智さん那和さんが込み上げてくる笑いを必死で押さえていた。
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