｢直接、芫に問いただす。もし芫が蔡慶だとしたら、近くに古狸かダオレンがきっといるはずだから、俺が･･････｣ ｢駄目だ紗智｣ 彼が緊張した強い表情をして言葉を遮った。 ｢組織を抜けた俺をマーとバーバは息子として温かく迎えてくれた。高行さんと結婚をさせてくれた。一太やハルちゃん、たいくんとここちゃん、那和と巡り会わせてくれた。それだけじゃない、ジウともこうして再会できた。日本に来て良かった。たくさんの幸せ、想い出、愛情。マーからいっぱいもらった。だから、もう何も思い残すことはない。だから、俺が今度はマーや弟たちを守る。守りたいんだ」 差し含(ぐ)む涙をそっと拭った。 芫さんと刺し違えても決着をつける、これで終わりにすると覚悟を決めた紗智さんに、どう声を掛けるべきか悩んでいると、 「你们都不是不幸的孩子了、应该拿到幸福吧！そう地竜に言われなかったか？」 それまでずっと黙っていた柚原さんが静かに口を開いた。 ｢そんなこと言ったって………｣ ｢残された鞠家はどうなる？マーは？那和やジウは？紗智、一人で全部抱え込もうとするな｣ 肩に手をそっと置いた。