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番外編 マトリの女?

「その永遠のライバルに助けられたのは誰でしょうね」 橘さんが皮肉たっぷりにぼそりと呟くと、 「ほんと、誰でしょね」 何となくばつが悪そうな顔をして言い返した。 「大人になって小さい頃のことなんかすっかり忘れていたのよ。それがね去年の春、国分町のあるオカマバーで違法薬物を客に売り売春を斡旋しているホステスがいるって匿名のタレコミがあって潜入捜査に入る事になったのよ。その為には女装をしないといけなくて、それでハル君に相談したらそういうことは俺より橘の方が詳しいって言われて……かつての恋敵に頭を下げるなんてアタシのプライドが許さなかったんだけど……」 チラリと国井さんを見た。 「背に腹は代えられないって彼がね、橘に頭を下げてくれたの。それで千里を紹介してもらったの。彼女は全てお見通しだった。アタシがずっと心の奥底にしまっていた本来あるべき姿を引き出してくれたの。忙しくても充実した毎日をおくっていたんだけど、ずっと何かが足りないってもやもやしていたから。霞みかかった空が一瞬で晴れ渡った、そんな感じかしら」 「千里とすぐに意気投合しましたしね。私も妹に友達が出来て嬉しいんですよ」 ここから出して!と言わんばかりにお座りして窓をバンバンと叩く太惺と心望のそばにしゃがみこむ橘さんと柚原さん。 「お外に行きましょうね」 「たいくんはぱぱたんっておいで」 そう言うと二人をそれぞれ抱き上げてくれて。窓を開け、サンダルに履き替えてみんながいる庭へと連れ出してくれた。

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