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番外編 マトリの女?
「未知さんは偉いわね。アタシだったら絶対に橘を追い出して二度と彼の側に近づけさせないわ」
長い脚を組んでじっと見詰められた。
「橘さんは僕の親代わりです。橘さんがいてくれたから彼と出会うことが出来たんです。その日暮らしのぎりぎりの生活を送っていた僕と一太を助けてくれた恩人です。覚悟はしていたけど彼から橘さんとの関係を知らされたときはさすがにショックでご飯も喉を通らなかったけど、橘さんは僕や彼よりも子どもたちを可愛がってくれて、面倒をみてくれます。子どもたちも、ままたん、ままたって慕って懐いているから…………あ、あの、すみません」
何を言ってるのかだんだん分からなくなってきた。
エヘヘと愛想笑いをすると、
「子どもたちを見てると分かるわ。みんな橘が大好きなんでしょう。あと柚原。久し振りに会って驚いたわ。警察に重要参考人としてマークされていた頃の柚原とはまるで別人なんだもの。すっかりパパの顔ね。二人の馴れ初めを千里から聞いてアタシ、年甲斐もなくキュンキュンしちゃったのよ」
チカちゃんがすっと立ち上がりエプロンを身に付けた。
「ナオさん、そろそろ天ぷらに使う野菜の下ごしらえをはじめるわよ」
「あ、はい。すみません、ぼぉーとして」
びくっとして背を震わせるナオさん。
「あの、すみません。あれ、何ですか?」
庭を指差した。
「竹馬よ。昔よく遊んだのよ。惣一郎さんとご近所さんの手作りよ。未知さんの子どもたちにプレゼントしてくれって頼まれた彼が預かってきたの。その他に駒や竹とんぼもあったわよ。ある程度準備したら、あとは彼がしてくれるから、そしたら一緒に遊んだら?」
「はい、そうします」
ナオさんの目がキラキラと輝いた。
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