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番外編 マトリの女?

「くにいさん、なにがあるの?」 「さつまいもに蓮根、竹輪、鶏天、南瓜………なんせ大人数だからな、橘さんと鞠家さんが頑張って揚げてる」 お茶碗と箸を握り締め、揚げたての天ぷらをつまみ食い………じゃなくて、味見しながら、流し素麺の台の脇にそれぞれスタンバイし今か今かと待ちわびる子どもたち。 「ハルちゃんとどかない!みえない!」 ウーさんがすっと駆け寄り抱き上げてくれた。 「ありがとうウーさん」 ウーさんが膝を少し曲げた。 「ダイジョウブ?」 「うん、とどくよ」 「ヨカッタ」 ほっとしたのかにこっと微笑みを返した。 「ハルちゃんいいな~~みくも~~」 未来くんがそぉーとフーさんを見上げた。 (俺?) まさか指名されるとは思っていなかったフーさん。ビックリしながらも、信孝さんとナオさんをチラっと見た。 「すみませんお願いしてもいいですか?」 ナオさんに許可をもらい、抱き上げると、 「ノッポのおにいちゃん、たかいよ!」 未来くんがキャキャと黄色い歓声を上げた。 「ほら、流すぞ」 「いっぱいあるから、喧嘩するなよ」 彼と信孝さんが子どもたちに声を掛け、 国井さんとチカちゃんが素麺を少しずつ竹の中に入れた。 太惺は橘さんの背中におんぶされ熟睡中。 心望は紗智さんに抱っこしてもらい、二人とも目を真ん丸くして素麺が流れていく様子をじっと眺めていた。 「もしかして初めての流し素麺?」 「うん。俺も那和も初めて。ジウもだと思う」 那和さんとジウさんは、一太や晴くんに食べ方を教えてもらい、なかなか素麺を掬い上げることが出来なくて悪戦苦闘していた。 「ここちゃん抱っこするから、先に食べて」 「俺はあとでいいよ。ここちゃんとみんなが食べてるのを見てるから。お兄ちゃんたち楽しそうだね」 紗智さんが心望の顔を覗き込み、ぷにゅぷにゅの頬っぺたに自分の頬を嬉しそうにすりすりさせた。

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