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番外編 マトリの女?

「バーバ、全然食べれないよ‼」 那和さんがジウさんの右手首を掴むと一緒に挙げた。 「じゃあ、アタシが教えてあげる」 チカちゃんが素麺が入ったボールを脇に抱え二人を助けに行ってくれた。 「ペンを持つようにして……そうそう上手よ」 箸の持ち方から、どうやったら流れてくる素麺を掬えるか手取り足取り、一から丁寧に教えてくれた。 国井さんが焼きもちを妬かないかひやひやしたけど、笑顔で子どもたちに接してくれていた。 「俺の可愛い子どもたちに焼きもちを妬いたらただじゃおかねぇぞって念を押しておいた。だから大丈夫だ」 「遥琉さん、脅しちゃだめだよ」 「別に脅してないよ」 ニコニコして嬉しそうだった。 気の知れた仲間が集まりわいわいガヤガヤととても賑やかだった。ご近所さんから五月蠅いって苦情が来ないかナオさんは気が気じゃなかったみたいだけど……そんな楽しいひとときも、招かれざる来訪者によってし~~んと一気に静まり返ってしまった。 両手を挙げゆっくりと姿を現したのは弓削さんだった。その背後には芫さん。まるで獲物を狙う鷹のような鋭い目付きで、早くしろと命令していた。背中に銃かナイフだと思うけれど何かを突きつけていた。 ぐるりと周りを取り囲む若い衆は弓削さんを人質にとられ手も足も出せなかった。

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