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番外編 マトリの女?

「なぁ、芫。変だと思わないのか?」 「何がだ?」 「いくら昇龍会の直参とはいえ、一地方都市を縄張りとする菱沼組に本庁のマル暴のデカだった男がいることだよ。しかも二人もだ」 「…………」 芫さんは黙り込んでいた。 それを見た国井さんは畳み掛けるように言葉を続けた。 「何だ知らないのか?俺はてっきり飼い主に聞いていると思っていたぞ。一人はインターポールに派遣されたこともある凄腕のデカだった男だ。将来を嘱望されていたが突然寿退社をしやがった。もう一人は…………」 国井さんの言葉にハッとし顔を上げる芫さん。 弓削さんの背中に突き付けていた銃を、ジウさんに向けようとした矢先。 回りをぐるりと取り囲んでいた若い衆が、芫さんに向けて一斉に銃を構えた。 「お前ら計ったな!」 芫さんが凄みをきかせ国井さんを睨み付け、怒鳴り散らした。 「子どもにそんな物騒なモノ向けるんじゃない。マトリとソタイには面倒見が良かった伊澤をおやっさんと呼び慕う若い連中がやたらと多くてな。それに熱狂的な千里のファンの甲崎もいる。俺らはただ一致団結しただけだ。別に何も計っていない」 「彼の言う通りよ」 互いに一歩も譲らず。 弓削さんをなおも盾にする芫さんと睨み合いが続いた。

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