｢鷲崎に協力を仰ぎ、卯月の女房と子どもたちがここに帰ってくる直前に菱沼組の若い衆を１０人ほど彼に預け、代わりに千里の弾よけと俺の部下と甲崎の部下を入れ替えておいたんだ。ダオレンが間違いなく卯月の女房と子どもたちを狙ってくると踏んでな。芫、お前には聞きたいことが山のようにある。無駄な抵抗を止めて大人しく投降しろ｣ 国井さんに何を言われようが芫さんは全く動じなかった。 それどころか意味深な薄笑いを浮かべると、引き金に指を掛けた。 そのときーー。 弓削さんが那和さんに目で何かを訴えかけた。 (もしかして…………これ？) 持っていた箸を見せると、 首を軽く横に振り、那和さんの足下に目を向けた。 (違うの？えっと………足下を見ろって？) 不思議そうに首を傾げながら下を見た。 そこにあったのは余った竹で国井さんがあっという間に作ってくれた水鉄砲。さっきまでジウさんと子どもたちが遊んでいた。 (もしかしてこれ？) 高く掲げると、弓削さんが大きく頷き、チラッと紗智さんの方に目をやった。 ｢紗智に渡せってって、弓削が｣ ｢俺？｣ 何がなんだか分からないまま、紗智さんは心望を那和さんの腕のなかに移動させた。