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番外編 マトリの女?
「手の掛かる悪戯っ子といえばジウ。水浸しの天才といえばジウ」紗智さんがぶつぶつと一人言を呟きだした。
「そうだ。思い出した。ジウが一番得意ことをーー亜優 !」
大きな声で叫んだ。
「亜優……?」
芫さんが怪訝そうに顔を顰めた。
根岸さんと伊澤さん以外、組のみんなにはまだ正式にお披露目をしていないけれど、ジウさんの新しい名前だ。
【亜】は亜細亜《アジア》の【亜】。日本と中国の平和の掛橋になりますようにとの祈りを込めた。
2番目の子どもという意味もある。
【優】は、ジウさんが大好きな地竜さんのもうひとつの名前からもらった。
お年寄りや、障害を持つ人、見た目には分からない障害を抱えた人、ちいさい子ども、みんなに優しく接することが出来る人に育ってほしいとの願いを込めた。
紗智さんが下から水鉄砲をおもいっきり投げた。
「飛距離が足りないかも」
そんな心配は無用だった。
前を向いたままジウさんは水鉄砲をしっかりと左手でキャッチした。
そして素早く構えると、阿吽の呼吸で弓削さんがすっと身体を右にずらし、芫さんの手に握りしめられている銃に当たるように水鉄砲を勢いよく撃った。時間にしてほんの数秒の出来事だった。
弓削さんが銃を取り上げると、国井さんと彼が芫さんをすぐに取り押さえた。
ジウさんが血相を変えて何かを三人に必死で伝えようとしていた。
「芫は自決する。口に毒。弓削、芫を助けて!」
紗智さんが訳してくれて。
弓削さんが、指を噛み切られてしまうかも知れないのに。それでも迷うことなく、指を芫さんの口のなかに突っ込んだ。
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