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番外編 マトリの女?
「芫、死ぬことだけはぜってぃに許さねぇぞ!さっさ口を開けろ!」
芫さんの口の端から血がポタポタと滴っていた。
弓削さんの血だ。
「………バカだ………」
「ジウは使い捨ての便利な道具じゃねぇ。ちゃんと生きてる人間だ。オヤジと姐さんをバカにしたらただじゃおかねぇって、何度も言ってるだろう」
芫さんがクスリと微かに笑った。
「ダオレンがどこに潜んでいるか分からないんだ。未知や子どもたち、芫を守れ!」
彼が声を張り上げた。
「未知さん、紗智さん、那和さん早く家の中に」
チカちゃんが隣接する家々を鋭い眼差しで見渡した。
「ナオ、ジウ、早く中に入れ」
信孝さんが二人の背中を押した。
「信孝、お前もだ。カタギを巻き込むわけにはいかない」
踵を返そうとした信孝さんを彼が止めた。
「俺は縣一家の長男坊だ。遥琉とともに生きていくって腹を括ったんだ。チカ、二軒となりの家は空き家なんだが、夜中に明かりが付いていたって、さっき隣の宮城さんから連絡があった」
「分かったわ。至急、確認させるわ」
チカちゃんが若い衆にすぐ向かうよう指示した。
彼と国井さんで、芫さんの口を抉じ開け、弓削さんが血みれの指で粉々になった錠剤の欠片を必死で掻き出した。
「ユゲ、俺が憎いはずだ」
「戯れ言はあとで聞いてやる。いまは、喋るな」
ペットボトルの水で口のなかを洗浄すると、芫さんがゴホゴホと激しく咳き込み、血を吐き出した。
「チカさん、救急車。このままだったら芫さん死んでしまう」
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