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番外編 ここにいても……いいの?
残したら勿体ない。朝から飲まず食わずの部下たちに食べさせてやって欲しい。
国井さんが彼にそう頼み、チカちゃんを伴い、部下と共に芫さんを最寄りの警察署へと連行していった。
チカちゃんの話しだと、夜には東京に移送されるみたい。
ジウさんは………じゃない、亜優さんは、電線に止まったまま動かないツバメをぼんやりと眺めていた。
「亜優さん、素麺食べる?天ぷらも揚げたてのがあるけど…………」
何度か声を掛けたけど返事がなかった。
さっき、あんなことがあったばかりでご飯が喉を通らないのも無理がない。
そぉっーとしておいてあげよう。
亜優さんの前を素通りしようとしたら、手首を掴まれた。
「○×△▲○××」
何かを必死で伝えようとしていた。
芫さんが最後に亜優さんに残した言葉は、紗智さんの通訳だと、
『どうせすぐに用済みになって捨てられる。スペアには綺麗な水より泥水がお似合いだ。所詮は能無しの疫病神』
クスリで頭がラリっていたとしても、言ってはいけない言葉だ。
彼が怒りを露にしていた。
僕も怒りを通り越して悲しくなった。
亜優さんの良いところをどんどん見つけて、褒めてあげれば、今よりもっと伸びる子なのに、なんでモノとしか見れないのかな?
亜優さんはスペアじゃない。生きている人間なのに。
「亜優さんは僕と遥琉さんの大事な子供だよ。大事っていうのは、大切っていう意味。目に入れても痛くないっていう意味………紗智さん、那和さん」
言葉が通じないのがもどかしい。
想いをすぐに伝えることが出来ないんだもの。
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