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番外編 ここにいても……いいの?本当に?

「為になるって、ならないような気もするけど………まぁ、いっか。亜優、お腹いっぱい食べて、芫のことなんて綺麗さっぱり忘れよう」 那和さんが亜優さんの手を引っ張った。 「未知、亜優は頭を撫でて欲しいみたいだ。いっぱい撫でて褒めてやってくれないか?」 鞠家さんにそんなことを頼まれて亜優さんを見ると、目が合うなり顔を真っ赤にしていた。 一挙一動が一太や遥香みたいで可愛い。 手がかかる子どもほど可愛いってまさにその通りかも知れない。 「亜優さん、おいで」 両手を大きく広げた。 「……」 亜優さんは一歩だけ前に進んだだけで、すぐにまた立ち止まってしまった。 「いいの?ここにいても……本当に?うそじゃない」 紗智さんが訳してくれた。 「嘘付いてどうするの」 これ以上不安な気持ちにさせないよう、わざと明るく振る舞った。 「……」 「ん?」 亜優さんがモゴモゴと口を動かしていた。 「マーって呼ぶ練習。根岸さん相手に一生懸命頑張ってたんだよ。亜優、恥ずかしがらずに。ほら、頑張って!」 紗智さんがそっと背中を押した。 「今ならライバルはいないよ。マーを独り占めに出来るチャンスだよ。ほら、頑張れ!」 那和さんが肩をポンと軽く叩いた。 うん、亜優さんが大きく頷き、ゆっくりと歩み寄ってくれた。 お腹が大きいから、手が届くところまで亜優さんをそっと抱き締めて、背中を撫でてあげた。 本当は頭を撫でる予定だったんだけど、そのつもりでいたんだけど、亜優さんの方が僕より12cmくらい背が高いということすっかり忘れていた。 あとで知ったことだけど、彼が焼きもちを妬いて周りにいた若い衆に八つ当たりし、橘さんに大人げないですよ、そう窘められたみたい。

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