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番外編 ここにいても……いいの?本当に?

それから数日後…… 渡会さんの家に戻り、元通りの生活を送っていた。あくまで表面上は。 実際といえば…… 芫さんは依然として完全黙秘を貫き、国井さんらの事情聴取には一切応じていないと彼が話してくれた。 警察の威信にかけて何としても、違法薬物不法所持の疑い、ならび犯人隠匿の罪で菱沼組にガサ入れに入りたい県警側と、事件はすでに解決済みと主張するマトリとの溝は深くなる一方だった。 両者に挟まれる形になった国井さん。 蜂谷さん同様、きっと形見の狭いをしているに違いない。 「どこもかしこもお巡りばっかり。これじゃあ、犯人扱いだよ」 「文句を言っても仕方ないよ」 登校する一太に付き添ってくれた紗智さんが不満を漏らすと、鞠家さんがよしよしと頭を撫でて宥めていた。 「マスコミも面白おかしく書き立てて・・・・・ありもしない記事を真に受ける人間だっている中にはいるだろう。他人(ひと)を想う気持ちが彼らに少しでもあればいいんだが・・・・」 ナオさんがまた傷付き、部屋に引き籠ってしまわないか。僕も彼も、それがとにかく心配だった。 「返信は?」 「ううん、まだ」 朝からナオさんに何度かメールをしたけど、なかなか返信が来なかったから、余計に心配になってきた。

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