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番外編 ここにいても……いいの?本当に?

「バーバがいるから大丈夫だよ」 「うん、そうだよね」 チラチラと何度も後ろを振り返りながら家の中に入ろうとした時、生暖かく湿った空気が背中を吹き抜けていった。 「那和さん、やっぱり何か変。嫌な予感がする」 昨日、客間をたまたま通り掛かったとき、彼と弓削さんが立ち話しをしていた。決して盗み聞きをするつもりはなかったんだけど、足が縫い止められたように動かなくなってしまった。 寝惚けた芫さんが弓削さんをユエとよく間違えて呼んでいたこと。 鞠家さんに聞いたらユエは中国語で【月】。黒竜《ヘイノン》の月《ユエ》・・・・・?ちょっと待てよ。どこかで名前を聞いたことがあるんだ。必ず思い出すから時間をくれと返事が返ってきたことを話していた。 「あのね、那和さん、シュアン・・・・バオ・・・・・・なんだっけ?一回聞いただけだから忘れちゃった」 「シュアンバオタイ(双胞胎)つまり双子のことだよ」 「仮に・・・・あくまで仮だよ。真に受けないでね。芫さんに瓜二つの、双子の兄弟がこの世に存在していて、すべての罪を芫さんに擦り付けて、自分にとって不都合な存在である浅井さんと皆藤さんを真っ先に抹殺し、芫さんが気に入っていた弓削さんの口を封じるため、手始めに彼や遥香を襲う」 「あり得なくもないね。今思えば、亜優や弓削、変なことを言ってたかも知れない」 那和さんが、橘‼度会さん‼紫さん‼もう、誰でもいいから、蜂谷に大至急連絡して‼おっきな声でそう叫んだ。

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