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番外編 ここにいても……いいの?本当に?

「紗智さん入っても………」 襖を開ける前に一声掛けると、すっーと静かに開いたから驚いた。 「そろそろ来る頃かなって紗智と噂してた」 那和さんが笑顔で迎えてくれた。 「伝言係りも大変だね」 「うん。でも、僕にはこのくらいしか出来ないから」 「亜優もいたんだ。おいで。今は、いちゃついていないから。大丈夫だよ」 僕の後ろに隠れる亜優さんにすぐに気付くと、中に招き入れてくれた。 「未知か」 布団に横になっていた鞠家さんが起き上がろうとした。 「無理せず今は大人しく寝ててください。上澤先生も静養が必要だって仰ってました」 「それは分かる。でも、弓削がいないんだ。俺まで休むわけにはいかない」 「鞠家さん、今は紗智さんと夫婦水入らずの時間を大切にしてください」 ずっとつきっきりで献身的に看病している紗智さんをはっとして見上げる鞠家さん。 「さっきも言ったが、泣き過ぎだ。俺は大丈夫だから、もう泣かないでくれ」 腕を伸ばし、頬を伝う涙を手でそっと拭った。 「伝言係りって、遥琉からなにか言伝てがあるのか?」 「はい」 「そうか、だいだい予想はつくが、まぁ、聞こう」 「弓削さんが自分の後釜に根岸さんを指名したって彼が話してました。でも、根岸さんは、俺みたいな老いぼれより、若いのにチャンスをやれと。自分は彼の守役として側にいるだけで充分だって」 「なるほど」 「それで鞠家さんを若頭に、柚原さんを事務局長に、それぞれ任命したいって」 「は?俺がか?」 一瞬、鞠家さんの動きが止まった。

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