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番外編 ここにいても……いいの?本当に?

まさに青天の霹靂。 驚くのも無理ない。 「遥琉の言うことは絶対。断ることが出来ないからな、参ったな」 ゆっくり起き上がると、繰り返し手で髪をかき上げながら、ため息をついていた。 「高行さんが若頭・・・・ ?」 紗智さんの声が上擦っていた。 「普通は柚原じゃない?ね、紗智」 「うん」 那和さんも混乱していた。 「橘さんが、柚原さんはあれもこれもいっぺんに出来るひとじゃない。あぁ見えて意外と繊細で不器用なひとだって。それに優しすぎるから、荷が重すぎるって」 「柚原は、イクメンのぱぱたんだからな。組よりも守らないといけない大事なモノがある。橘の言う通り荷が重すぎるかも知れないな」 そこで一旦言葉を止めると、チラっと様子を伺うように紗智さんの顔を見つめた。 「バーバが高行さんを必要としているんでしょう?」 「あぁ」 「それなら反対しない」 「元マル暴のデカが、ヤクザの用心棒に成り下がった。それだけで警察には白い目で見られ、言いたい放題言われている。これでもし俺が若頭になれば、今よりももっと色々言われ、辛い想いをさせるし、苦労だってさせる」 「俺は大丈夫。高行さんの側にいれるだけで幸せだもの。それに、俺一人じゃない。マーや、たくさんの弟たちと、妹たちがいるから、゛次男坊゛として頑張る」 「すまないな」 鞠家さんの表情がふっと緩んだ。 「鳥飼やフーやウー、それに亜優にもそれぞれ頑張ってもらって、まずは遥琉と一緒に組を立て直す。そこからスタートだな。のんびり休んでいる場合じゃないな。紗智、着替えるぞ」 「駄目」 「は?」 「は?じゃない。医者の言うことも絶対だよ。それにマーに言われたでしょう?それとも、俺と夫婦水入らずしたくないの?」 不貞腐れる紗智さんの顔を見た鞠家さんがしまったと気付いたときは遅かった。すっかり臍を曲げてしまった紗智さんの機嫌をなんとか戻そうとあたふたしていた。

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