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番外編 それでも俺は姐さんとともに生きていく
「誰だ、ノックもしねぇで。勝手に入ってきやがって。カシラに失礼………あ、姐さん!」
中にいたのは弓削さんの舎弟の………えっと名前は確か………あ、そうだ!思い出した。ヤスさんだ。
「ごめんなさい。驚かせてしまって」
「まさか姐さんが見舞いに来てくれるなんて思ってもみませんでした」
ぺこぺこと頭を下げながら、個室にしてもらったんです。どうぞと案内してもらった。
「カシラ」
ベットの上に胡座をかいて座り、ぼんやりと両手を見つめる弓削さんの肩を軽く揺すった。
「カシラの大好きな姐さんが来てくれましたよ」
何度か声を掛けると、
「あ?姐さん?」
ようやく我に返ったみたいで、不機嫌そうに眉をしかめた。
「見舞いは不用。来なくていい。そうオヤジに頼んだはずだ」
「確かに彼に言われました。弓削さんが退院してくるまで大人しく待っていろって。でも、そしたらもう二度と弓削さんに会えないんじゃないか。僕の前から姿を消すんじゃないかって心配になって………口べただから、どう言っていいか分からないけど、弓削さんが側にいてくれたから、守ってくれたから、僕はこうして生きていられるんです。だから、どうしてもお礼が言いたくて………ありがとう弓削さん」
緊張でがちがちになりながらも下げられるところまで頭を下げた。
「手が痺れるんだ。味覚も戻らない。俺がいたのでは、姐さんの迷惑になる。足手まといになる」
寂しそうにぽつりと呟いた。
「そんなことない」
ぶんぶんと頭を横に振った。
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